分子病理検査

通常の病理検査と分子生物学的手法を融合した諸技術を用いて病理検査を行います。これを分子病理検査と呼びます。
本研究所では特に、悪性リンパ腫の病理学的な検索を目的とした検査を多く行っており、そのための試薬(抗体やプローブなど)も豊富にそろえています。

主な検査項目

READシステム

悪性リンパ腫疑い症例について、病理組織検査をもとに各種データ(フローサイトメトリー、染色体、遺伝子解析)を組み合わせて多角的に解析を行う、総合検査システムです。 詳細は、こちらをご参照ください

免疫染色

パラフィン切片に対して各種抗体を用いて免疫染色を行います。 染色可能抗体は「免疫染色抗体一覧」のページをご参照下さい。

【例1】HER2
乳がんの治療標的分子であるHER2を乳癌組織の上に染め出すことが可能です。この検索の結果によって、乳がん患者さんの治療法の選択がなされます。 乳がんをHER2抗体で染色したところ、細胞膜に強い陽性が確認された(score3+)

【例2】PD-L1
エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、HER2陰性のトリプルネガティブ乳癌における腫瘍浸潤免疫細胞にPD-L1 (SP142)の陽性が認められる。

PD-L1

CCR4タンパク(IHC)

再発又は難治性のCCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の治療薬である「ポテリジオ(一般名:モガリズマブ[遺伝子組み換え])の適応を判定するための補助として用いられます。
詳細はこちらをご参照下さい。
※皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)についてはCCR4陽性/陰性に関わらず「ポテリジオ点滴静注20mg」の有効性が確認されているため、CTCLに対する「ポテリジオ点滴静注20mg」の使用にあたっては、CCR4陽性を確認する必要はありません。

in situ hybridization(ISH)法

EBER および Kappa, Lambda ISH

プローブを用いて、RNAを病理切片上で検出します。
・EBER ISH:EB virusに感染したEBER陽性細胞を検出します。
・Kappa and Lambda ISH:本検査はセット項目です。
 κ鎖、λ鎖をそれぞれ検出し、偏りの有無を確認します。
 悪性リンパ腫や形質細胞腫、骨髄腫の診断に有用です。


  • EBER

  • Kappa

  • Lambda

fluorescence in situ hybridization (FISH) 法

蛍光標識プローブを用いて、DNAを病理組織切片上で検出します。

 HER2遺伝子検査(HER2-FISH)

HER2に対する分子標的薬は、HER2 タンパクの過剰発現がある症例にのみに効果が期待されています。HER2の免疫染色によって判定が2+(境界)となった場合にHER2 FISH検査はHER2遺伝子の増幅の有無を検索し、増幅のある場合にはHER2分子標的治療薬の効果が期待されるとされています。
判定基準につきましてはこちらをご参照ください。

オレンジ:HER2 シグナル
緑:セントロメアシグナル

この症例では緑のシグナルとオレンジのシグナルの比が2.0未満且つHER2遺伝子の平均コピー数が4.0未満であるため、HER2 遺伝子の増幅がないことが示されている。

オレンジ:HER2 シグナル
緑:セントロメアシグナル

この症例では緑のシグナルとオレンジのシグナルの比が2.0以上且つHER2遺伝子の平均コピー数が4.0以上であるため、HER2 遺伝子が増幅していることが示されている。

 PS-FISH®

Paraffin-embedded tissue section-fluorescence in situ hybridization
パラフィン切片を用いたFISH法です。染色体転座の有無の検索に非常に有効で、悪性リンパ腫など、染色体転座を原因とする腫瘍の検索に必須の検査項目となっています。

PS-FISH® probe (split signal)
ALKBCL2CCND1 (cyclinD1)
IgHMALT1c-MYC
PAX5BCL3BCL6
BCL10IRF4 , DUSP22IGK(Kappa)
IGL(Lambda)


c-MYC 遺伝子領域内の分断を示す 所見(split signal)を示している

 胞状奇胎鑑別検査(FISH 法)

胞状奇胎は絨毛における栄養膜細胞の異常増殖と間質の浮腫を特徴とした病変で、妊娠成立時の精子と卵子の異常によっておこります。胞状奇胎は、細胞遺伝学的には精子由来の2倍体である全胞状奇胎、2精子1卵子由来の3倍体を原因とすることが多い部分胞状奇胎の2つに分類されます。いずれも侵入奇胎や絨毛癌を発生する可能性があります。全胞状奇胎は病理組織学的所見及び免疫染色で鑑別できますが、部分胞状奇胎と水腫様流産(侵入奇胎や絨毛癌への移行はみられない)の鑑別は病理組織学的所見及び免疫染色では困難です。そこで、FISH(fluorescence in situ hybridization)法により3倍体を証明することで、部分胞状奇胎を水腫様流産と鑑別することができます。
詳細はこちらをご参照ください。


部分胞状奇胎が疑われた症例
CEP17遺伝子プローブを用いたFISH法により3倍体を示す像

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